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最近の医療は、様々な分野の科学が応用され急速に発展しています。膝関節では、関節鏡を利用し小さな傷から靱帯を治す鏡視下靱帯再建術(きょうしかじんたいさいけんじゅつ)、傷んだ関節を人工の関節に取り替える人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)などが行われています。また、コンピュータによる手術支援(ロボット手術やナビゲーション)も膝関節手術に導入されるようになりました。ここでは最近、発展が著しいナビゲーション手術についても紹介します。
膝関節靱帯損傷の中ではスポーツ活動に伴う前十字靱帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう (疾患編2参照))の頻度が最も高く、手術的な治療が必要となります。この場合、関節鏡(かんせつきょう)を用いて靱帯を作り直す鏡視下靱帯再建術という方法が行われます。通常、膝の前(膝蓋腱)か後(ハムストリング腱)から腱の一部を採取し、内視鏡下に靱帯を作り直し(再建し)ます。この手術では、元の位置に正確に靱帯を再建することが重要となります。正しく行われた再建術では良好な関節安定性が得られ、スポーツ復帰も可能となります。

変形性膝関節症(疾患編1参照)になると、脚(あし)は通常O脚に徐々に変形していきます。O脚になると膝の内側にかかる負担(荷重)は増加し、痛みが増して、さらに変形も進行していきます。

高位脛骨骨切り術は膝の下でスネの骨(脛骨(けいこつ)(機能と解剖編参照))を切り変形を矯正することで、痛みを和らげ膝の変形の進行を抑えます。比較的程度の軽い内反型(O脚)の変形性膝関節症で、年齢のより若い患者さんに適応となります。

変形性膝関節症(疾患編1参照)や関節リウマチ(疾患編1参照)などにより関節の軟骨がすり減ってくると、痛みが生じ関節の動きが制限され、さらには変形も生じます。
この様に変形した骨の表面を切除し、金属やポリエチレンなどでできた人工物と置き換えることを人工関節置換術といいます。
人工膝関節置換術を行うことによって、痛みの無い歩行が可能となり、日常生活に必要な関節機能の回復が期待できます。
また変形した脚(あし)の矯正(きょうせい)を行うことも可能です。もちろん手術には合併症を伴うことがありますので、担当した主治医とよく相談して手術を決めて下さい。
人工関節置換術の手術時間は通常1~2時間程度で、平均的な入院期間は約1ヵ月です。人工関節の耐用年数は、15~20年程度と考えられておりますが、患者さんの年齢や骨の状態により異なります。また、人工関節を出来るだけ長持ちさせるためには正確に手術を行うことも重要で、この目的のために後述するナビゲーション手術が有用と考えられます。

ナビゲーションはもともと航海(術)、航空(学)といった意味があります。現在最も身近なものの一つとして、カーナビゲーションが挙げられます。カーナビゲーションは主にGPSを用いて自動車の位置を計測し、モニター画面上に車の位置を示したり、進むべき進路決定のための情報をドライバーに提示したりします。
手術ナビゲーションも、カーナビゲーションと同じように、手術中に様々な情報を外科医に提示することができます。
整形外科の領域では、脊椎外科や人工関節置換術に主に応用されていますが、前述した靭帯再建術や高位脛骨骨切り術などにも用いられています。手術においてこれまで外科医の経験や勘に頼っていた部分をナビゲーションが補い、より正確で安全な手術を行うことが可能となります。

脛骨(すねの骨)を切るガイドが取り付けられた図(左)と、これを受けてナビゲーションが取り付けられたガイドの傾きや切る量の情報を示した画面(右)

大腿骨(太ももの骨)を切るガイドが取り付けられた図(左)と、ナビゲーションが取り付けられたガイドの傾きや切る量などの情報を示した画面(右)

脛骨(すねの骨)の骨を切ったあとに、金属製のプレートを取り付けます。
さらに、このプレートの上に白いポリエチレン製の部品を取り付けます。

切り取った大腿骨の表面にも金属製の部品を取り付け、人工膝関節(太腿側とすね側)の設置が完了します。
ロボット手術とは、ロボット(器械)が患者さんと直接(もしくは間接的に)接触し、手術を行うものです。これに対してナビゲーションは、術前計画を立てたり、手術中に様々な情報を外科医に提供したりするもので、手術自体は外科医が行う手術支援システムです。
もともと軍事用に開発されたもので、人工衛星を用いて地球上の現在位置を調べるためのシステム。全地球測位システム、汎地球測位システムとも言います。
人工関節置換術の合併症は、手術手技の進歩や人工関節の材料・デザインの改良により、かなり少なくなりました。しかし現在もごく僅かではありますが、幾つかの合併症が起こる可能性があります(感染、人工関節の破損や弛み、深部静脈血栓症など)。